中華人民共和国

中国は、人口13億人、GDPが世界2位の経済大国です。中国市場は、規模が大きく、高い成長率を維持しているので、日本企業にとって非常に魅力的です。
経済成長は減速しつつありますが、まだ7%台の成長を続けています。欧米や日本に比べれば非常に高い成長率であり、今後も発展が続くと考えられます。
中国市場では、日本製品に対する消費者ニーズが高く、日本企業にとって参入・進出のチャンスが高い言えます。
一方、模倣品の9割は中国製と言われていますので、中国が模倣品対策の主戦場になります。

特許・実用新案

中国には、特許(発明専利)と実用新案(実用新型専利)があります。
特許は、日本の特許とほぼ同一の制度内容です。日本から中国への出願は、殆どが特許です。日本の特許と同じ対応で、中国でも特許を取得できます。
従来は特許の審査に5年以上もかかっていました。しかし、審査官の増員などの対策により、2011年度には審査期間は約2年(22.9か月)に短縮しています。したがって、特許を模倣品対策に活用しやすくなりました。
実用新案は、特許よりも出願件数が多く、その殆どが中国国内からの出願です。実用新案は、日本企業には殆ど活用されていません。
しかし、実用新案は、模倣品対策において、熟知しておくべき非常に重要な制度です。

実用新案は、低コストで容易・早期に取得でき、権利行使し易く、かつ、無効になりにくいという特徴がありるからです。
実用新案は、方式審査のみで登録となるため、約6ヶ月程度で権利化できます。
願時の費用が特許よりも安く、審査段階の費用も殆どかかりません。
実用新案に要求される進歩性の基準が特許に比べて低いため、既存技術の小さな手直しであっても権利化できます。日本で特許が取れなかった技術でも、多少の変更を加えると、中国で実用新案を取れる可能性が十分にあります。

その一方で、進歩性の基準が低いことから、無効になりにくいとも言えます。実用新案は、無審査で登録になっているにもかかわらず、無効になるのは1/3程度です。
さらに、実用新案権は、特許と遜色のない権利行使が可能です。実際に、中国で最も高額の損害賠償金を認定した知財訴訟は、実用新案権の侵害訴訟です。この訴訟では、3.3億元(約40億円)の損害賠償が命じられました。

日本とは異なり、中国では、特許と実用新案の併用(同時出願)が可能です。実用新案権と特許権の両方が付与された場合には、いずれか一方を放棄しなければなりませんが、特許権が付与されるまでの期間を実用新案権でカバーできるメリットがあります。

このような事情から、中国においては、模倣品対策として実用新案を活用することを強くお勧めしています。

意匠・商標

中国には意匠法はありませんが、意匠は、特許法で外観設計専利として保護されます。
意匠の出願件数は、特許の出願件数を上回っています。中国の意匠は、無審査登でありながら
も、簡単に権利行使ができる権利だからと考えられます。つまり、意匠は、模倣品対策に活用
しやすい権利なのです。
模倣品には、外観を単純にコピーしたデッドコピー品も数多く存在するため、意匠を取得する
意義は高いと言えます。特に、出願から4ヶ月程度で登録されるため、寿命が短い製品や開発
サイクルが速い製品の場合には、是非とも活用すべき制度です。
商標は、日本の商標とほぼ同一の制度内容です。従来は審査に2~3年かかることもありまし
た。しかし、法改正により9ヶ月以内に審査を終了しなければならないと規定されたことか
ら、審査期間が大幅に短縮されています。
中国では、日本のブランド品や地名(産地名)などを、勝手に商標登録してしまう冒認商標が
問題になっています。他人に知的財産権を先取りされてしまうため、模倣品よりも深刻な問題
が発生します。
商標を先取りされると、そのブランド品を中国で販売できなくなります。さらに、冒認者から
商標侵害として賠償請求されるリスクがあります。このため、中国市場から撤退せざるを得な
くなることもありえるのです。
したがって、中国市場に参入・進出する前に、必ず中国への商標出願を済ませておくことが鉄
則になっています。

権利行使

当然ながら、知的財産権を取得しても、権利行使をしなければ模倣品は排除できません。日本
企業は、もっと権利行使を積極的に行うべきです。
中国は、模倣大国天である一方で、模倣取締大国でもあります。 中国政府は模倣品対策に力を
入れています。このため、申立てを適切に行えば、行政摘発や刑事摘発が円滑に行われます。
中国では、知財訴訟も盛んに行われています。日本企業であっても十分に知財訴訟を成功させ
ることができますので、尻込みすることはありません。
また、税関における輸入差止めも盛んに行われています。中国全土には40か所の税関があり
ます。これらの税関に対して迅速にアクセスできる代理人(関税代理人)を選定する必要があ
ります。税関代理人には、中国特許代理人ではなく、税関実務に精通する専門家を選定すべき
です。
権利行使を行っても、ほとぼりが冷めると模倣を再開することもあります。このため、一時的
な対策ではなく、継続的な対策が不可欠です。また、模倣業者は無数に存在しますので、根気
強い対策が求められます。